じゃあなんでキスしたんですか?


「あ……ううん、森崎さんの話は……もうわかったから」
 
壁に手をつきながら立ち上がり、ベッドを降りた。ぎしりと軋んだのは、ベッドのスプリングじゃなくて、わたしの胸のほうだ。
 
キッチンに立って水を飲んでいると、後ろから、ためらうような声が聞こえた。

「ミヤちゃん、あのね……実はマイ、このあいだ見ちゃったんだ」
 
振り返ると、妹は引き戸にもたれるように立っていた。足の親指をすり合わせるようにして、言いづらそうにわたしをうかがっている。

「見たって、何を?」

「このあいだ、アパートの前で」
 
周囲の音が消える。

ざわっと胸がふるえる。

「ミヤちゃん、森崎さんに告白してたでしょ?」
 
心臓の鼓動にかき消されるように、マイの声が遠い。

「ねえ、森崎さんなんてやめちゃいなよ。今日とか、あの人マイにすっごい夢中だったよ?」
 
同じ顔なら、マイのほうがいい。
 
マイのほうがふんわりしてて、可愛くて、性に垣根がなくて、癒される。

「ミヤちゃん来ないって知ったら、すごく嬉しそうにしちゃってさ。いろんなところに連れてかれちゃった」
 
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