じゃあなんでキスしたんですか?
「なんかあったのか」
「も、森崎さんが、妹と……うっ」
思い出した瞬間、嗚咽がこみあげた。言葉を続けられないわたしを面倒そうに見やり、「あーもう」と声を出す。
「とりあえず、送ってやっから」
帰れと言われる前に、わたしは激しく首を振った。
家にはマイがいるのだ。
こんなごちゃごちゃな気持ちのままあの子と顔を合わせたら、どんなひどい言葉をぶつけてしまうかわからない。
「今日は、帰りたくないんです」
わたしが泣きつくと、桐谷さんの顔が真っ赤になった。
「バカかおまえ! そういうセリフを俺に吐くな!」
怒鳴られて首をすくめると、彼は身体の底から絞り出したような深い溜息をついた。
「あーもうしょうがねぇなぁ。話聞いてやるから、とりあえずそこの公園にでも行くぞ」
促されて桐谷さんのあとに続き、会社のものよりも広いエレベーターに乗り込んだ。
「つか、なんでうちがわかったんだ?」
「……森崎さんが前、俺は十二階で、桐谷さんは七階って」