じゃあなんでキスしたんですか?
「そんで七階で表札を探し回ったわけか。ていうか、あきれるくらい記憶力いいな」
「森崎さんに関することだけです」
「ああそうかよ」
エレベーターを降りる桐谷さんの後ろに続く。
「おまえはホントうぜーな。あ」
エントランスを抜け、自動ドアをくぐろうとしたときだった。桐谷さんが急に足を止め、わたしを振り返った。
「やっぱ、うちにしよう」
「え?」
肩を押され、無理やり回れ右をさせられる。
「あ、あの」
「雨、降りそうだから」
そう言うと、ぐいぐいわたしの背中を押して、降りたばかりのエレベーターに乗り込んだ。
七階の通路を歩きながら暗い空を見上げたけれど、星はまたたいていても、雨雲なんてどこにも見当たらない。
「桐谷さん?」
「いいから、ほら早く」
玄関のカギを開けた彼に、腕をつかまれるようにして、強引に中に引っ張り込まれた。
「きゃっ」