じゃあなんでキスしたんですか?
森崎さんの部屋はちらりとしか見なかったけれど、同じマンションでも間取りが少し違うようだった。
桐谷さんの部屋はどちらかというとわたしの部屋の構成に近い。
玄関から伸びた廊下の両脇にレストルームとバスルームがあり、突き当りにリビングがある。十二畳ほどのリビングに通されると、わたしはダイニングテーブルに座るように促された。
「言っとくけど、酒は出さねーぞ」
「わかってますよ」
床に直接置くタイプのソファやテレビラックなどの家具はほとんどが黒色で、一見すると大人の男性の空間なのに、部屋の中はなんとなく雑然としていた。
汚いわけじゃないけれど、物が多いのだ。
壁には様々な色形の帽子がかけられ、そこここに雑誌や本が積み重なり、棚の上にはお土産品のようなよくわからない置物がたくさん並んでいる。
無駄が嫌いな桐谷さんの部屋は、必要最低限の家具しか置かれていないようなイメージだったから、ちょっと意外だった。
「あんまじろじろ見んなよ」
お茶の入ったグラスをテーブルに置くと、正面に腰掛ける。わたしは透明のグラスを手に取って、もう一度部屋のなかを見回した。