じゃあなんでキスしたんですか?
「わりと、雑多な感じなんですね。女の人をいつでも連れ込めるような、ホテルの一室みたいな部屋をイメージしてました」
「おまえさりげなく失礼だよな」
嫌そうに唇を引き伸ばし、ぐんと胸を張る。
「俺は家に来たがるような女とは深い関係にならないって決めてんだよ」
「自信満々に言ってますけど、わりとサイテーな主張ですよ」
ふんと鼻を鳴らし、女性と深い関係には至るくせに、深い絆を結ぶことは嫌がるエース様は「そんで、どうしたって」と話を戻した。
急に現実に引っ張られ、肩がずしりと重くなる。
「森崎さんと妹が、手をつないでたんです」
会社で強く腕を振り払われたところから、家を飛び出すまでの顚末を、わたしは桐谷さんに話した。
黙ったままわたしの話を聞いていた彼は、なにか確信したように「やっぱりな」と吐息をこぼす。
「え」と目を向けるわたしに、わざとらしく首をすくめてみせた。
「妹に、してやられてんじゃん」
「え……?」
ダイニングチェアに横向きに腰掛けて、桐谷さんは頬杖をつく。