じゃあなんでキスしたんですか?
「おまえがこれまで男に関わってこなかったのは、妹のせいもあるんじゃねぇの?」
「どういう意味ですか?」
聞き返したわたしに、桐谷さんは容赦のないセリフを吐き出す。
「顔が似てんだもんよ。おまえを気に入った男がいたとしても、妹がかっさらってたんじゃね?」
「なにを、言ってるんですか」
「まあ、憶測だけどな。おまえの恋の芽ってやつを、妹があっさり摘み取ってたとしたら?」
言葉が出てこない。
「アレは合理的に動けるタイプだよ。俺と同じでな」
薄く笑う端正な顔のとなりに、妹のほどけるような微笑を思い出す。
人懐こく笑いながら、わたしのそばにいる男性に近づいた?
そんなまさか、と頭の中で声がした。
「そんなはずないです。だってわたし、中学から寮生活で、妹とは離れてましたし」
「寮に入ってから、妹とは疎遠になったのか?」
「いえ、そんなことは」
学生寮が厳しかった中高のときは頻繁に実家に呼び戻されたし、大学に入ると妹のほうがわたしの部屋にしょっちゅう遊びに来ていた。
黒い塊が、喉を圧迫しながら下りていく。
「でも、そんな……まさか」