じゃあなんでキスしたんですか?
「おまえの友達から情報仕入れて、裏でこそこそ動き回ってたんじゃねぇの。あの妹なら、やりかねなそう」
マイの何を知ってるの、と反論したかったけれど、言葉にならなかった。桐谷さんの憶測を裏付ける証拠もない代わりに、妹の潔癖を証明できるだけの根拠もない。
無垢で透明だった妹の像に、かすかにひびが入る。
「森崎さんも、結局妹の毒蛾にかかったんじゃねぇの。顔が同じならいっかってな」
「そんなの……うそ」
森崎さんは、全然ちがうって言ってくれていた。わたしとマイは、全然違うと。
唇を噛みしめた。
心では信じたいのに、頭の中に、思い出したくない光景がよみがえる。
わたしを振り払った腕と、妹の指が絡んだ手。
「たしかに、最初はおまえの顔を気に入ったのかもしれない。けど結局、妹のほうに落ちたんだよ。だからお前を邪険にする」
「そんなの、嘘です!」
信じたくない、という心の悲鳴が、言葉になってあふれ出た。
と、それまで冷たい声で分析していた桐谷さんが、急にこちらを向いた。いたずらっぽい笑みを浮かべて、人差し指を突き出す。
「じゃあ、確かめてみようぜ」
「え……?」