じゃあなんでキスしたんですか?


玄関のドアが勢いよく開いて、悲鳴を上げそうになる。
泡を食っているわたしに、いきなり華奢なからだが飛びついてきた。

「ミヤちゃん!」
 
泣きそうな声を上げ、マイがぎゅっとわたしにしがみつく。
 
細い腕に巻き付かれたまま、しばらく茫然とする。
 
時が止まったような空間のなかで、妹はわたしの背後に立つ男性に気が付いた。
 
細いからだがこわばって、小刻みに震えはじめる。

「あ、あんた……」
 
いつもおっとりとしているマイの表情が、青ざめる。
そして彼女は毛を逆立てた猫のように敵意をむき出しにし、桐谷さんを睨みつけた。

「まさか、ミヤちゃんに手ぇ出してないでしょうね!」

「はあ?」
 
桐谷さんの素っ頓狂な声が響く。妹の思いがけないセリフに、わたしも面食らった。

「ミヤちゃん泣かせたら、絶対に許さないから!」
 
泣き叫ぶような声に、言葉を失う。
 
妹の激しい口調も耳にするのも、こんなに取り乱したところも見るのも、はじめてかもしれない。
 
少なくとも、ここ十年はお目にかかったことがない。
 
抱き付かれたまま立ちつくしているわたしを、桐谷さんがちらりと見る。

「てか、こいつ泣かしてんのは俺じゃなくて、おまえだろ」
 
エースの言葉に、妹はぐっと喉を詰まらせた。怯えるようにわたしから離れ、目を伏せる。
 
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