じゃあなんでキスしたんですか?
「……電話に出たの。ミヤちゃんのフリして」
「え?」
わたしから目を逸らしたまま、マイは続ける。
「ミヤちゃん強いお酒飲んで、酔っぱらって寝ちゃってたから。電話に気づいてなくて」
「いつの、話?」
「昨日の夜」
「昨日って……」
会社で腕を強く払われて、ひどくショックを受けて帰宅したわたしは、ふだん口にしないような強いお酒を飲んだのだ。
彼の記憶を消してしまおうと、祈るような気持ちで。
そうやって意識が飛んだあとで、森崎さんから電話がかかってきてたなんて。
「なんて……言ってたの」
わたしが詰め寄ると、マイは観念したように肩をだらりと落とした。
「なんか、謝ってた。言い過ぎたって。森崎さんミヤちゃんに気がありそうだったから、ふたりをくっつけたくなくて、ミヤちゃんのフリして彼と会う約束したの」
マイと仲良くしているところをわたしが見れば、森崎さんに幻滅してあきらめてくれるだろうと、マイは思ったらしい。
「でもあの人、マイが待ち合わせ場所に行ったらすごくがっかりした顔して、帰ろうとするから、強引に引き留めて、無理やり引っ張りまわして」
言いながら、マイの黒い目に涙が溜まっていく。