じゃあなんでキスしたんですか?
真相がもたらした驚きは、意外にもあっけなく過ぎ去り、なんだかひどく悲しい気持ちになった。
妹の泣くところを久しく見ていなかったわたしは、怒りよりももっと別の衝動に揺らめいている。
言葉に迷っていると、傍らから低く尖った声が聞こえた。
「それじゃ、自分の男友達に頼んでこいつを襲わせようとした理由は?」
「え」とマイが顔を上げる。
わたしは桐谷さんを振り返った。
すべてを把握している彼は、ちいさな滓すら見逃さないというように、淀んだ事情を掬い上げる。
「都心駅で、おまえのボーイフレンドがこいつをホテルに連れ込もうとしたらしいけど?」
妹の顔からさっと血の気が引くのが分かった。同時に、わたしのからだも張り詰める。
真実を知っていいのかどうか、わからない。
足が震えて、何かにすがっていないと立っていられない。
桐谷さんのジャケットにつかまろうとしたとき、視界のなかで愛らしい唇が、震えた。
「なに……それ。ホテルって」
夜に浮かび上がるような白い腕で、マイが桐谷さんにつかみかかる。
「知らない! どういうこと!」