じゃあなんでキスしたんですか?
悲鳴じみた声に、こわばった背中がほぐれていく。わたしは息をついた。
「ユウ君が、わたしとマイを、間違えたみたいで」
エースのシャツをつかんだまま、妹はこちらを見る。真っ黒な目が、驚いたように見開かれる。
「ユウ君が……?」
あの日起こった出来事を話すと、マイは放心したようにアパートのドアにもたれかかった。
「あいつ……あいつ……なんてこと」
ユウ君に嫌気が差していた妹は、あの日、都心駅で買い物するから、とウソをついて彼の誘いを断ったらしい。
目を赤くして怒りを堪えている姿を見て、わたしはこっそり安堵した。
よかった……わざとじゃなかったんだ。
「あいつ、絶対許さない」
いつものふんわりした音からは想像もつかないかすれた声で、妹は唇を噛みしめる。
それから、思い出したようにわたしを見つめた。
「ごめんなさい……ミヤちゃん」
ちいさな唇が小刻みに震えて、目がどんどん潤んでいく。
眉間に入った筋で、マイが涙を堪えようとしていることが分かった。普段ふわふわしている彼女の真剣な表情は、わたしの胸を締め付ける。
「ごめんなさい」
上ずった声で言うと、妹の涙腺はあっけなく崩壊した。