じゃあなんでキスしたんですか?
彼が右手が空中でひらりと揺れる。そのまま下りていく背中に、わたしはもうひとつ、皮肉っぽい言葉を投げかける。
「桐谷さんとは、違うタイプでしたね」
マイの頭を撫でながら言うと、彼は思いがけず振り返った。
「同じだよ」
「え?」
完璧に整った顔が、ふっと緩む。
「おまえのことが、すげー好きってことだろ」
「え……」
「じゃあな、バカ姉妹」
子どもみたいに「いーっ」と口を広げて憎たらしい笑みを見せると、桐谷さんは階段を下りきって外灯に照らされた通りを歩き出した。
自信たっぷりでどこまでも偉そうなエース様の後ろ姿は、実際はとても細いはずなのに、なんだかやけに大きく頼もしく見えた。