じゃあなんでキスしたんですか?


 *

「森崎さんも、鬼瓦やってください」

「なんでだよ」
 
ソファに沈んでクッションを抱きしめるわたしに間髪入れずに突っ込むと、森崎さんは苦笑する。

「小野田は気にしすぎなんだよ。俺は見てなかったんだから、気にするなって」

「うう、だって」
 
渡されたマグカップから白い湯気が立ちのぼる。ここのところ急激に気温が下がったせいか、窓の外では星々のきらめきが冴えていた。
 
広いわりに物が少ない森崎さんの部屋は、なんだか寒々としていて、わたしは両足を持ち上げてソファで膝をかかえた。

「あ、これ美味しい」
 
すっきりと芳ばしいお茶の味わいに思わず声を漏らすと、彼が嬉しそうにソファにもたれかかる。

「だろ。黒豆茶なんだ」

「へえ、豆のお茶」

「からだにいいぞ」
 
森崎さんはお酒を飲まないせいか、お茶や紅茶にやたらと詳しくて、お茶専門店みたいに様々な種類の茶葉を取り揃えている。

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