じゃあなんでキスしたんですか?

 
キッチン脇のカウンターには、レストランのドリンコーナーみたいにいろいろなお茶が入った透明の瓶が並んでいた。
 
ダウンライトに淡く照らされた喫茶店のような落ち着いた空間で、こちらを向いた彼の顔がやさしく崩れた。
 
会社では見られない柔らかな表情に、心拍数が上がっていく。
それと同時に、なんだかもどかしい気分になった。
 
どうして森崎さんは、そんなに簡単に仕事とプライベートの顔を使い分けることができるのだろう。
 
自分だけが空回りをしているみたいで、なんだか情けない。
 
自然と肩が落ちた。

「わたし、ダメですね。ひとりで慌てて、会社で変な顔をしちゃったりとか」
 
ふ、と吐息を漏らし、森崎さんがつぶやく。

「平気だって。可愛かったから」
 
驚いて顔を上げると、切れ長の目が、しまったというように丸まった。

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