じゃあなんでキスしたんですか?

 
感情なんて、もともとコントロールできないものなんじゃないの。
 
自然に笑ったり、泣いたり、それを堪えることはできても、その気持ちが起こらないように制御することなんてできない。

「だから、切り離すんだよ。感情が湧いても、それを冷静に見てる別の自分がいるっていうか」

「言ってることがよくわかりません……」

「俺もうまく説明できない」
 
わたしの頭をぽんと叩き、顔を近づけてくる。

「会社では、何よりも理性が強く働いてるってことじゃないか」
 
森崎さんの形のいい鼻がわたしの鼻先をくすぐって、甘い予感に心臓が騒ぎ出す。
 
唇が触れそうな距離で、わたしは問い返した。

「今はもう、理性的じゃないんですか」

「今もまだ、残ってるよ。ほんのちょっとだけどな」
 
徐々にまぶたを下ろして、森崎さんはわずかに顔を傾ける。
キスの態勢になった彼の表情は、びっくりするくらい色っぽくて、わたしはいつも落ち着かない気持ちになる。

「みやこ」
 
甘い声と、甘いキスに、チョコレートみたいにあっというまに溶かされてしまう。

< 251 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop