じゃあなんでキスしたんですか?
十一月に入ってから出したコタツに火を入れないまま入っていると、後ろから妹が抱き付いてきた。
「どうかしたのー?」
「んー。会社でね、どうもびしりと仕事できないっていうか」
「仕事に集中できないの?」
首に絡みついてくるマイは、以前にも増して甘えっこになったような気がする。わたしはつい苦笑した。
「そうじゃなくて、なんだろう。普段のときと仕事のときの切り替えがうまくできないっていうのかな」
「あーわかった! オンとオフがうまくいかないんだ?」
わたしの顔を覗きこむと、彼女は嬉しそうに部屋の隅のマガジンラックから雑誌を取ってきた。毎月マイが買っている、二十代前半の女性向けファッション誌だ。
「ここに書いてあるよ。通勤コーデでオンとオフ」
雑誌をコタツに広げ、きらびやかなモデルの写真をトントンと叩く。
「ミヤちゃんはさぁ、通勤服が地味なんだよ。メイクも最低限だしさぁ」