じゃあなんでキスしたんですか?


「ええ、そうかなぁ」

「そうだよ。普段とは違う格好をするだけで、気持ちが切り替わるんだから」
 
形から入ることも大切なのだと、マイは胸を張る。
 
確かに、となりの席の大橋さんはいつもきらびやかな格好をしているけれど、あれは男性でいうスーツのようなもので、女性にとっての武装と言えるのかもしれない。

「そういうもんなのかなぁ」

「絶対そうだって! 明日は早起きしてばっちり決めてきなよ」

「う、うん」
 
身を乗り出すようにして詰め寄ってくるマイに、気圧される形で、わたしはうなずいてしまった。

「うふふー楽しみぃ」

声を弾ませてキッチンに立つ妹の細い背中を見つめて、なんとなく背筋が寒くなった。



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