じゃあなんでキスしたんですか?

 
上がり框に立っていてもなお、森崎さんの視線に見下ろされてしまう。
 
そしてその目は、いつもと違って鋭いままだった。普段は玄関をくぐった瞬間、別人になったみたいに柔らかな表情を見せるのに。

「あの……森崎さん?」
 
沈黙に耐えきれず言葉を発した瞬間、彼が低くつぶやいた。

「――小野田、それ」
 
伸びてきた親指が、わたしの唇を押さえる。

「俺を、誘ってるのか?」

「えっ」
 
いつもの穏やかさが一切消えた真剣な目線に、わたしは固まった。

「会社で抑えんの、大変だった」

「な、なにを……」

「ほんと、やめてくれ」と呻き、森崎さんはいきなりわたしを抱き寄せた。 

「みやこ」
 
耳元で甘く囁かれ、腰が砕ける。
 
崩れた足をすくい上げられ、横抱きにされたまま、唇を重ねられた。

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