じゃあなんでキスしたんですか?


「修司、さん」
 
負けじと名前を呼ぶと、森崎さんは目を見張った。
 
わたしに覆いかぶさったまま、何かに堪えるようにきつく目をつぶる。
 
大きなからだが、微かに震える。

「あ、あの」
 
不安になって見上げたとき、親指と人差し指で、唇をつままれた。
 
頬を上気させた彼が、不機嫌そうにわたしをにらむ。 

「それ……絶対、会社で言うなよ」

「え、なんで」

「絶対ダメだ」

「いえ、わかってます、けど」
 
会社で下の名前なんて呼んだら大変なことになる。だからこそ、森崎さんも普段からわたしを苗字で呼んで、とっさのときに声にしてしまわないように注意をしているのだ。
 
それでも、いまの森崎さんのかたくなな態度には、納得がいかなかった。

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