じゃあなんでキスしたんですか?


「ミヤちゃん、マイも撮って撮って」

「わお! お嬢ちゃんとってもかわいいねー! くるっと一周回ってみて。おおイイね! 最高だよその笑顔!」
 
どこぞのいかがわしいカメラマンの口マネをしながら、ばしばしシャッターを切っていると、背後から声がした。

「おい、ミヤコ」
 
条件反射のようにからだがこわばる。

「なんで浴衣着てねーんだよおまえ」
 
こわごわ振り向いた先に、不機嫌そうに眉をひそめた美形の顔がある。

わたしはカメラを構えたポーズのまま、さびついたロボットのように声をきしませた。

「今日はわたし、動きやすい服装を、心掛けていまして」
 
シンプルなカットソーとクロップドパンツという姿のわたしを舐めまわすように見下ろすと、桐谷さんは盛大なため息をついた。

じめついた空気の中を歩き回ったのか、こめかみにうっすらと汗がにじんでいる。

「っとにお前はよー」
 
そう言う彼も生成りのシャツにジーンズという味気ない格好だ。
 
モテアピールが留まらない桐谷さんなら、浴衣くらい着てきそうなのにな、と意外に思っていると、横からつんつんと腕を突かれた。

「ミヤちゃん、誰、誰?」

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