じゃあなんでキスしたんですか?
わたしの腕に取りすがるようにして、マイが真っ黒な瞳に星をいくつもきらめかせている。
しまった! と思ったときにはすでに遅く、腹黒エースの目が妹をとらえる。
「マイちゃんダメ! 身重にされちゃう!」
視線を遮るように妹の前に立ちふさがると、後方からがしりと頭をつかまれた。
「人聞きわりぃこと言ってんな」
「きゃー」
お祭りの賑やかな空気のなかに、わたしの叫びはあっというまに吸い込まれた。
桐谷さんの手から逃れ、妹をかばうようにじりじりと後退する。
そんなわたしの腕をするりと抜け、マイは好奇心旺盛な猫みたいに彼を見上げる。
「かっこいい~! ミヤちゃんの会社の先輩ですか?」
ああもうダメだ。かわいい妹が腹黒エースの毒蛾にかかってしまう。
いつぞや待ち合わせ場所で見かけたように胡散臭い笑顔を浮かべるかと思っていたら、桐谷さんはつまらなそうな顔のままマイを見下ろした。
あれ、と思う。
わたし以外の女の子にはとても外面がいいのに、素の表情を隠そうとしていない。
「……似てんな」
エースのつぶやきに、マイがぱっと顔を輝かせた。