じゃあなんでキスしたんですか?


「そうなんですぅ! よく双子と間違われるんですよわたしたち。ねぇ、ミヤちゃん」
 
わたしを振り返る華奢な肩で、髪飾りのパールビーズがしゃらりと揺れる。

「ミヤちゃんの妹のマイです。姉がいつもお世話になってます」
 
ほどけそうな笑顔でお辞儀をする妹を見て、桐谷さんは面白いものを見つけたとでもいうように唇の両端を持ち上げた。

「声まで一緒じゃん」
 
ごうんごうん。
 
エースの不敵な笑みに、耳の裏で警鐘が鳴る。
銀行員のお父さんと元国語教師のお母さんの血が、わたしのなかで猛烈な警戒信号を発令してる。
 
このふたりを近づけてはいけない。
目が当てられないほどのふしだらな関係がはじまってしまう!

「ママママイちゃん! ね、あっちの屋台で」
 
美味しい焼きそば売ってるんだよ、と言おうとしたところで、妹のかご巾着からアップテンポなメロディが流れ出した。

「あー友達から電話だ。ちょっとごめんね」
 
わたしと桐谷さんをちらと見て、マイは背中を見せた。
 
浴衣の裾を翻し、ちょこちょこと危なっかしい小走りで人の少ない場所まで行くと、ケータイを耳に当てる。
 
近くにいるときは気づかなかったけれど、周囲にいる男性の目が吸い寄せられるようにマイを追いかけていく。

「妹、ねぇ」
 
作り帯のリボンを眺めながら桐谷さんがぽつりと言う。

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