じゃあなんでキスしたんですか?


わたしはあわてて彼の前に立ちはだかった。
姉として、大事な妹をこれ以上危険にさらすわけにはいかない。

「ダメです! マイに手を出さないで」
 
毅然と言い放つと、整った眉が驚いたように持ち上がった。

「はあ? 誰が出すかよ、アホ」

「ア、アホぉ?」 

「お前はほんっとーにアホだな」
 
桐谷さんは心底あきれたように首を振った。

うつむきがちなその仕草は本当に何かを憂えているようで、妹を守ろうと意気込んでいた気持ちがちょっとだけ削がれる。
 
桐谷さんの大きな二重の目が、じっと遠くを見た。
 
まるでとがった氷でできてるみたいな、鋭さのある目つき。
その視線の先にあるのは、周囲の男性の目をひきつけてやまない、かわいい妹の後ろ姿だ。

「アレはたぶん……俺と同じ種類だな」

「……は?」

「おまえら、似てんのは外側だけってこと」

「いたっ」
 
わたしにデコピンをすると、桐谷さんはくるりと背を向けた。そのまま会場の外に向かって歩き出す。

「ど、どこ行くんですか」

「帰るんだよ」

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