じゃあなんでキスしたんですか?
トイレにでも行ったのかな?
会社の納涼祭といえども、家族の参加まで認められているから、規模はそこそこ大きい。
バッグからケータイを取り出そうとしたとき、そう離れていない場所に見覚えのある後ろ姿が見えた。
何の変哲もない黒いポロシャツの背中に、否応なしに目を奪われる。
たくさんの人の中でもひときわ目立つ、すらりと背の高いシルエット。
胸の鼓動が、勝手に反応する。
「森崎さん」
声をかけると、彼が振り返った。
いつも冷静沈着でめったに動きを見せない森崎課長の目が、わたしを見たとたん、大きく見開かれる。
「小野田……?」
「あ、ミヤちゃーん」
大きなからだの陰から、ひょこっと妹が顔を出す。
「あれ、もしかして、ふたり知り合いなのー?」
彼とわたしを交互に見つめ、マイは嬉しそうにまばたきをする。その白い手が森崎さんの腕をつかんでいて、わたしは息をのんだ。
「マイちゃん……何してるの」
わたしの視線に気づくと、妹はますます森崎さんの腕にしがみつく。