じゃあなんでキスしたんですか?


「ああ、未婚だし、あいにく彼女もいないから」

「えーそうなんですか。じゃあマイ、立候補したいなぁ」

「マイちゃん」
 
媚びた視線にかすかに笑っただけで、森崎さんは妹からわたしに視線を移した。
長い指でステージ脇の設営テントを指さす。

「俺は本部にいるから、何かあったら声かけてくれ」

「あ、はい」
 
立ち去っていくスマートな後ろ姿に、姉妹で釘づけになる。

「森崎さんかっこいいぃ! 王子様だねぇ、ミヤちゃん」

「う、うん。ていうかマイちゃん」

「マイ、森崎さん好きになっちゃったぁ」

「えっ!?」
 
遠ざかっていく背中をうっとりと見つめている妹を、まじまじと見つめてしまう。

「す、好きって! それは」
 
いったいどういう意味の好き?
 
口にする前に、マイは腕時計を見て「あっ、もう行かなきゃ」と声を上げた。

「友達との約束があるから、帰るね」

「え、でも。せっかく浴衣着てるのに」

「だからぁ、浴衣姿を見せてあげるの」
 
いったい誰に? と問いただす隙を与えず、妹はふんわり笑う。

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