じゃあなんでキスしたんですか?


「今日は泊まりになると思うから、夜ご飯は適当に調達してね」

「泊まるって、どこに?」

「友達のとこだよ」
 
屈託のない顔で答えると、マイは「じゃあねー」と手を振って出口に向かっていった。

薄闇に舞う艶やかな紫の蝶は、周囲の男性の目を引きつけて、会場の外に消えていく。
 
友達って……。
 
十中八九、このあいだキスをしていたユウくんだとか、あるいはそのほかの男の子のことに違いない。

わたしと正反対のマイは、昔から男の子に囲まれることが多く、女の子の友達が極端に少ないのだ。
 
姉としては男の子の家に泊まるなんて、と注意をしたいところだけれど、二十歳を超えた妹の行動を制限できるほど、わたしには威厳がない。

『みなさん、お待たせしました! ただいまより抽選会を行いまーす』
 
耳をつんざくマイクの音声が、会場を覆う。

ステージ脇に設営された白い三角屋根のテントに目をやると、自然とため息がこぼれた。
 
森崎さんのことを好きだと言ったその口で、友達の家に泊まると言った妹の言動は、わたしにはやっぱり理解ができなかった。

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