じゃあなんでキスしたんですか?

 
 *

運ばれてきたビールのピッチャーが次々と空になっていく。

チェーン居酒屋の座敷席には、楽しげな男女の赤ら顔がここそこに並んでいる。

「小野田さん、空いてんじゃん、ほらほら飲んで」
 
となりの男性が、すっかり泡の消えた黄金色の液体をグラスに注ぐ。
わたしはすぐさまそれを飲み干して、あたらしいピッチャーを店員に注文した。

「お、いいねーその飲みっぷり」

「小野田さん、顔に似合わずザルだなぁ」
 
笑い声のなかで視線を移すと、隅の席で森崎課長が静かにグラスに口をつけていた。
 
納涼祭を無事に終え片づけを済ますと、実行委員と運営を手伝った一部のメンバーで打ち上げと称し、近所の居酒屋になだれ込んだ。
 
イベントを盛り上げるという共通の使命を果たした社員たちは、タガがはずれたようにアルコールを流し込んでいく。

「あの、わたしここに居ていいんですかね?」
 
家族連れのベテラン社員はほとんど帰宅してしまったため、この場にいるのは独身者ばかりだ。
そのせいか、飲み会は若い熱気で盛り上がっている。

「いいに決まってんじゃない。わたしたちの勇士をカメラに収めてくれたんでしょ」

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