じゃあなんでキスしたんですか?
対面に座った、広報課のとなりの経営企画課に籍を置いている女性がにやりと笑う。
さっきまで白塗りにしていた顔はきれいに洗い流され、ばっちり化粧が施されていた。
そのとなりには運営の手伝いに駆り出されていた大橋先輩が座っている。もうひとりの先輩も離れた場所でグラスを飲み干していて、なんだかんだで広報課の面々は揃っているようだ。
「よーし小野田さん、飲み比べしようぜ」
「え、いいですけど、わたし強いですよ」
勝負を挑んできた男性とならんで座り、腕まくりをするフリをして、わたしはグラスを口に運んだ。
空気中にアルコールが溶けて漂っているみたいに気持ちがいい。
堅苦しい何かから解放された社員たちは、競うように笑って、飲んで、楽しんでいる。
学生のときのサークル飲みにすこし似ているけれど、女子ばかりだったそれとは違い、盛り上がり方が力強くて、なんとなく迫力がある。
男女混合の飲み会ははじめてではないけれど、ひとつのことを成し遂げた仲間という意識があるせいか、親しみ深かった。
テーブルを埋め尽くすような空きグラスを座敷の脇によけていると、長い脚に視界を覆われた。
「大丈夫か」
胸に響くような低い声に顔を上げる。
両手に飲み物を持った森崎課長が、なんとなく不機嫌そうにわたしを見下ろしている。