じゃあなんでキスしたんですか?
「これ、飲んで」
そう言って氷のかたまりが浮かんだ透明のドリンクを差し出す。
「なんですかこれ。焼酎ロック?」
「やわらぎみず」
胡桃色のドリンクを口に運びながら、森崎さんはわたしのとなりに腰を下ろした。
「いちいちこいつらの勝負受けなくていいからな……といっても、圧勝みたいだけど」
畳やテーブルの上に突っ伏して潰れている面々を見て、あきれたように吐息を漏らす。
ほんの少し浮いた眉間のシワは、不機嫌のせいではなく心配の表れらしい。それに気づいたとたん、なんだかくすぐったい気持ちになる。
「小野田はホントに強いんだな」
「森崎さんだって、全然酔ってないじゃないですか」
座敷を見渡せば、ほかの社員はみんな芯を抜かれたみたいにぐにゃぐにゃになって、そこらに転がっている。
あの厳しい大橋先輩ですら真っ赤な顔をしてとなりの男性社員と笑い合っていた。
「あれ、これただのお水ですね」
氷をからりと揺らしてみせると森崎さんは「和らぎ水だからな」と繰り返した。
「日本酒とか、飲む合間に水を飲めば深酔いしないそうだ。……もう手遅れかもしれないけどな」
座敷の隅っこにずらりと並んだ空っぽの日本酒の小瓶を見て、あきれた顔をする。