じゃあなんでキスしたんですか?
「ん? なんか……増えてる?」
テーブルに置かれた新しいウーロンハイを見て、森崎さんはちいさく首をひねる。
「あ、もうほとんどなかったし、氷溶けて薄まってたので新しいの注文したんです。飲み放題ですし」
「ああそうか。でもそろそろ出たほうがいい時間だな」
森崎さんはテーブルを囲っている、盛り上がりを通り越してのぼせている面々を見渡し、腕時計を見てグラスに口をつけた。
そのまま一気に半分以上飲んでしまう。
わたしの視線に気づくと、声をひそめた。
「ここの料理、ちょっと味が濃くなかったか? やたらと喉渇くんだよ」
いたずらを企む子供の内緒話みたいな小声に、ちょっとだけ笑ってしまった。
「そうですね。でも、居酒屋の料理なんてそんなもの――」
がん、と音がして、わたしは声を切った。
目の前で、森崎課長が頭突きでもするようにテーブルに頭を打ち付けた。そのまま突っ伏して、動かなくなる。
「ちょ、森崎さん!?」
わたしの声をかき消すように「このあとカラオケ行こうぜー」と実行委員の男性が叫ぶ。
酔っぱらいたちの歓声が上がる。
騒がしい座敷の隅っこで、わたしは広い肩を揺さぶった。