㈱恋人屋 TWICE!
「泣くことなんてありませんよ。僕、大切なことを改めて知ることができましたから。」
目を押さえていた方の腕を取り、龍馬さんが軽く引っ張る。
「手、合わせてあげて下さい。」
前に供えられてから時間が経ったのだろうか、色あせた花のすぐ前まで来ると、やはり独特の緊張感を感じずにはいられなかった。ここで、人の命が一つ失われた。その事実がそこにあるだけで、息が詰まってしまう。
「あ、色が悪くなってる…。」
「買ってあげた方がいいんじゃないですか?」
「…そうですね。」
近くには、おあつらえ向きに個人経営の花屋があった。
「いらっしゃ~い。」
メガネを掛けた白髪の「おばあちゃん」は、私達を見るとにこやかに挨拶をした。
「ゼラニウム、ありますか?」
「あるよ、そこに。」
店舗の隅の方に、ひっそりと赤いゼラニウムがたたずんでいた。
「ゼラニウム?」
「彼女、赤い色がキレイな花が好きだったんです。」
龍馬さんの手に取られたゼラニウムは、確かに今まで見たどの赤い色よりも赤かった。
「それにしても珍しいね~、ゼラニウムを選ぶなんて。」
しわがれた声が後ろから聞こえる。
「お供え用の花なので、好きだったものを選んであげたいんですよ。」
「お供え用…もしかして、そこの交差点での事故かい?」
「…ご存じなんですか?」
龍馬さんよりも先に私が尋ねる。
「ええ。知ってるも何も、私、その瞬間を見たんだもん。」
目を押さえていた方の腕を取り、龍馬さんが軽く引っ張る。
「手、合わせてあげて下さい。」
前に供えられてから時間が経ったのだろうか、色あせた花のすぐ前まで来ると、やはり独特の緊張感を感じずにはいられなかった。ここで、人の命が一つ失われた。その事実がそこにあるだけで、息が詰まってしまう。
「あ、色が悪くなってる…。」
「買ってあげた方がいいんじゃないですか?」
「…そうですね。」
近くには、おあつらえ向きに個人経営の花屋があった。
「いらっしゃ~い。」
メガネを掛けた白髪の「おばあちゃん」は、私達を見るとにこやかに挨拶をした。
「ゼラニウム、ありますか?」
「あるよ、そこに。」
店舗の隅の方に、ひっそりと赤いゼラニウムがたたずんでいた。
「ゼラニウム?」
「彼女、赤い色がキレイな花が好きだったんです。」
龍馬さんの手に取られたゼラニウムは、確かに今まで見たどの赤い色よりも赤かった。
「それにしても珍しいね~、ゼラニウムを選ぶなんて。」
しわがれた声が後ろから聞こえる。
「お供え用の花なので、好きだったものを選んであげたいんですよ。」
「お供え用…もしかして、そこの交差点での事故かい?」
「…ご存じなんですか?」
龍馬さんよりも先に私が尋ねる。
「ええ。知ってるも何も、私、その瞬間を見たんだもん。」