㈱恋人屋 TWICE!
その時の私の顔には、大方「焦ってます」とでも書いていたのだろう。龍馬さんはその場から走り去り、十分後に車に乗って戻って来た。

「乗って行きますか? 何か大変なようですし…。」
「あ、はい…。」

いかにもな高級車のドアを、傷つけない程度に迅速に開け、助手席に滑り込む。

「ここからはすぐでしたよね。」
「…はい…。」
「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。落ちついて下さい。」

エンジンのかかる音と同時に、車は交差点を抜けた。

「ピロピロピロピロ…。」

その時、またもや電話が。

「もしもし…?」

急いで電話口に出る。

「私のことは分かるな、新海紗姫君?」
「…社長…!」
「君達は少々、詮索しすぎた。この世の中に必要のないことまで、な。」
「要件は何ですか?」
「やはりあの支店は、必要なかったようだ。支店長である君が到着したら、少しばかり祭りでもやろうじゃないか。」
「祭り…?」
「一文字足して…『血祭り』とも呼ぶな。」

耳をつんざく銃声が、電話越しに聞こえた。それと同時に、何人もの悲鳴が上がる。

「私のことを気にする必要はない。元国会議員の私が、警察内部を操作するなど簡単なことだ。権力に盾を突くよほどの馬鹿がいない限り、逮捕などされんよ。」
「元…国会議員…。」

色々と調べていたので、元国会議員であることは私も知っていた。しかし、それがまさかこんな所で悪用されるとは…。
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