㈱恋人屋 TWICE!
「えっと…紗姫、さん?」

私の「最初の人」、五味大地くんだった。

「だ、大地くん!?」
「お久しぶりです、紗姫さん。」
「紗姫ちゃん、この人は?」

後ろから先輩が話しかけてくる。

「あ、初めまして、五味大地っていいます。紗姫さんに一度恋人役をしてもらったことがあって。」
「こちらこそ、初めまして。紗姫ちゃんの元上司で、今は本社で監査関係の仕事をしている結城友也です。」

私の知り合い同士が初対面の挨拶をするのは、どこか面白い。

「今日は、友也先輩が監査に来たの。」
「監査?」
「私、支店長になったんだけど、恋人屋って支店長の仕事をチェックする『監査臨店』っていうのがあってね。先輩はその監査委員なの。」
「へぇ…。」
「うん。大地くんこそ、何してるの?」
「大学卒業した後、ここで働くことになったんです。昔から服のデザインとか結構好きで…女子っぽいって言われるんですけどね。」
「そんなことないって。ね、先輩?」
「実は僕も好きなんです、デザイン。おかげで家庭科では割といい成績取れましたよ。」

知らない人同士だったはずの二人が、もう打ち解けている。

人間って、すごい。何とはなしにそう思った。

思えば、菜月くんともこうやって打ち解けて、近づいていったのかな…。

自分のことなのに、よくわからない。でも、そこまで気にしてないからいいか。

恋人師になってから、私は変わった。
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