私の師匠は沖田総司です【上】
「天宮」
「斎藤さん!?」
「ああ、そうだ。アンタに渡したい物があってな。入ってもいいか」
「あ、ちょっ、ちょっと待ってください!」
落ち着いた男の声がした途端蒼蝶が慌て始めた。
俺と部屋にある押し入れを見比べると、押し入れに向かって走り出して、押し入れの下の段に入っていた物を外に引っ張り出し始める。
全部の物を出し終えると、蒼蝶が俺の腕を掴んで空になったその中に俺を押し込んだ。
「静かにしててくださいね。絶対に」
頷くと蒼蝶は押し入れの戸を閉めた。
真っ暗で窮屈な中にいると蒼蝶とさっきの男の声が聞こえた。少しだけ戸を開けると光が差しこんできて、外の光景が見えた。
蒼蝶とさっきの声の主と思われる男が向かい合って座っている。
思った通り落ち着いた声の男は組長って奴じゃないな。
ホッとした気持ちと、男は誰なんだという疑問を抱えながら二人の会話に耳を澄ませた。
「元気にしているか」
「はい。新選組の方はどうですか」
「皆、天宮が居なくて寂しがっている。特に平助と総司が寂しがっているな」
「ああ、そうですか……。それは、申し訳ないです」
「俺もアンタと稽古ができなくて寂しい。早く帰って来てもらいたいな」
「わかりました。もうすぐ角屋の仕事は終わりですから、屯所に帰ったらまた一緒に稽古しましょうね」
「ああ、楽しみに待っている」
「あの、斎藤さん。組長はちゃんとご飯食べてますか?温かくして過ごしていますか?後手洗いうがいとか……」
「総司にしては珍しく天宮の言いつけをちゃんと守っている。余程天宮のみたらし団子が喰いたいようだ」
「そうですか、よかったです」
それからしばらく天宮と斎藤とか言う男は他愛のない会話をしていた。