そこにいる
菜都は僕を指さしてきた。
「そ・・そこに・・・」
言ってはいけないと分かっているはずの言葉を、菜都は口にしようとしていた。
これは、マインドコントロールなのか・・・
僕が菜都の口を塞ごうとした瞬間、シンが叫んだ。
「答えは『影』だ。・・ここにある・・自分の影だ・・・」
僕と菜都は、突然のシンの発言に驚き、振り返った。
「・・・シン・・?!」
僕は苦悶の表情で立ち尽くすシンに、それ以上かける言葉が思い浮かばなかった。
菜都も、言いかけた言葉を遮断するかのように口をつぐんだ。
「・・・ほぅ・・・そちらを選ばれましたか。
この女性を救ったと、お取りしてよろしいですね。」
僕は男の言っている意味が分からなかった。
シンは、男からその言葉を聞くとベッドの上にヘタッと座り込んだ。
僕は、ワケが分からずシンと画面の男を交互に見比べた。
「では、ゲームの規定により、高杉シン様。
本日午前0時より、あなた様は上級プレーヤーとなられます。」
『上級プレーヤー・・・?』
「・・シン・・どういう事・・・?」
僕は、目を見開いたまま閉じる事を忘れていた。
「オレ・・・今日・・このゲームをクリアしたんだ・・・」