やさしい手のひら・後編
本屋で片っ端から芸能関係の記事を探した

どれを見ても佐原樹里が現れる

飛びっきりの笑顔の佐原樹里にイライラしてくる

「あ…」

5冊目の本に佐原樹里のインタビューの記事が記載されていた

「…」

呆然としてしまう

健太を彼と呼び、二人のことを幸せいっぱいに語っている

「結婚の約束をしています」

そう書かれていた。今私はきっと蒼白な顔だろう

私はあった場所に本を戻し、急いで本屋を飛び出した

噂は嘘じゃない。本当だった

「やだよ…」

走りながら私は泣いていた

悔しさもあるけど、そうじゃない

もうどうにもならないこの気持ちが悲しかった

わかっている。やり直せないことはわかってる

でもやっぱり私を少しでも思っていてくれているかも、という自惚れがあった

結ばれなくてもそんな思いだけで救われていた

一緒にいられなくてもいい

お互い別な人といても、思い出だけで生きて行ける。そう思っていた

そう思っていたのに見事に砕け散っていった



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