キスはワインセラーに隠れて
「ほら、早く決めろ」
「じ、じゃあ、カフェラテ」
「……今日は甘いやつじゃなくていいのか?」
「はい……ちょっと、気分的に。じゃあ私、席探してきます」
いつものカフェの店内で、私はそう言い残すとふらふらとカウンターを離れた。
店内はそんなに混んでいないから、先に席を探しておく必要もないんだけど……
藤原さんからいつ話を切り出されるのかが怖くて、ちょっと一人になりたかったのだ。
*
――昨夜、リクエストしたラタトゥイユにピラフまで添えて、私にご馳走してくれた須賀さん。
そんな彼が教えてくれた情報はこうだった。
『こないだ変な女の客が店に来ただろう。アイツは俺の同業者でな。今度、自分がシェフ兼オーナーを務めるレストランを開くらしいんだが……そこにソムリエとして、藤原が欲しいらしい』
『あの女の人……シェフだったんですか!』
『ああ。……パリでの修業時代、同じ店で切磋琢磨した仲だ』
その女性の名前は室井若葉(むろいわかば)さん。
修業時代、女性だからということと、日本人の顔は海外では幼く見えるということで、周りからかなりばかにされていたと須賀さんは話した。
お前なんかが立派な料理人になれるのかって。