キスはワインセラーに隠れて


「ほら、早く決めろ」

「じ、じゃあ、カフェラテ」

「……今日は甘いやつじゃなくていいのか?」

「はい……ちょっと、気分的に。じゃあ私、席探してきます」


いつものカフェの店内で、私はそう言い残すとふらふらとカウンターを離れた。

店内はそんなに混んでいないから、先に席を探しておく必要もないんだけど……

藤原さんからいつ話を切り出されるのかが怖くて、ちょっと一人になりたかったのだ。





――昨夜、リクエストしたラタトゥイユにピラフまで添えて、私にご馳走してくれた須賀さん。

そんな彼が教えてくれた情報はこうだった。


『こないだ変な女の客が店に来ただろう。アイツは俺の同業者でな。今度、自分がシェフ兼オーナーを務めるレストランを開くらしいんだが……そこにソムリエとして、藤原が欲しいらしい』

『あの女の人……シェフだったんですか!』

『ああ。……パリでの修業時代、同じ店で切磋琢磨した仲だ』


その女性の名前は室井若葉(むろいわかば)さん。

修業時代、女性だからということと、日本人の顔は海外では幼く見えるということで、周りからかなりばかにされていたと須賀さんは話した。

お前なんかが立派な料理人になれるのかって。


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