キスはワインセラーに隠れて


体育座りをして、自分の膝にオデコを乗せ私はうなだれた。

そんな私に藤原さんは呆れたようなため息を漏らすと、こう言った。


「……ま、次の仕事が見つかるまで俺がお前を飼ってやるよ」


真面目に悩んでるのにそんな冗談を言われて、私はちょっと藤原さんを恨んだ。

なんだか完全に他人事だ。そりゃ、藤原さんには直接関係ないけど……もう少し、親身になってくれてもいいのに。


「私は猫じゃありません」


いじけたように言うと、彼はふっと笑ってこう返す。


「期限があるのが気に入らなくて拗ねてるのか。……ならいっそ、一緒に住むか?」

「い、いや別に、私はそんなつもり……っ」


そういう、恋愛方面のことでいじけたわけじゃないのに!

急に気まずくなってコーヒーを一気に飲もうとすると、テーブルの向こうからなぜかこちら側に移動してきた藤原さんに、後ろから抱き締められてしまった。


「あ、ぶな……っ! 火傷したらどうするんですか!」


マグカップをテーブルに戻しながら、背中にぴったりくっついた熱を変に意識しないよう、彼に言った。

でも、私の肩を包み込むように抱く藤原さんは、私の言ったことを無視して耳元でささやく。


「俺と一緒に住みたくないのか?」


……そんな聞き方はズルい。

それに、私が落ち込んでいるこのタイミングで誘うのもズルい。

一緒に住んだら、いっそ本当に藤原さんの猫になって、ずっと彼の腕の中で甘えていられたらなー、なんて。

社会人として――っていうか、そもそも人間としてダメな考えに、頭が支配されそうになっちゃうよ。


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