片恋シリーズ~鎌田公一編~
 こんな表情をずっと近くで見ていたいと思う。でも、もしかしたらこの笑顔はすでに誰かのものなのかもしれない。
 思いながらも切り出す。
「御園生」
「ん?」
「……俺、中学のときからずっと御園生のことが好きなんだ」
 突然すぎたのか、御園生はとても驚いた顔をした。パチパチ、と瞬きをする御園生に、
「御園生は今好きな人とか付き合ってる人、いる?」
 御園生はコクリと一度頷いた。
「それって藤宮くん?」
「……うん」
「そっか……」
 会話がなくふたりの間に風が吹いた。
「あのさ」
「あのっ」
 声が重なり、びっくりしてふたり顔をり見合わせる。と、どちらからともなく笑みが漏れた。
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