恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②




「なあに、大丈夫。さっきの榾木はもう捨ててあるヤツだから」


父親は全く悪びれる様子もなく、そう返してくる。


「ああ、捨ててある木にも、まだシイタケ菌が残っていて、生えてくるんですね…」


真琴は胸をなで下ろしながら納得した。

そして、同じようなやり取りを、かつて古庄としたことがあると思い出す。


夜の校舎に、二人きりで缶詰めになってしまった時だ。
あの時、古庄は同僚の戸部の机を漁り、真琴はカップラーメン泥棒の共犯者となった。


この行動パターン、この言動…。

父子と言うのは、こんなところでも似てしまうものなのだろうか…。



それにしても、薄暗い山道を猛スピードの車で走っている最中、瞬時でこのシイタケを見つけるなんて、何という目敏さだろう。先ほどのコンタクトレンズの件といい、父親のその驚異的な眼力に、真琴はただ驚嘆していた。








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