恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
「…そうだ。今日の夕食、一緒に食べましょう。私、ちょっと買い物に行ってくるわ」
そう言い残すと、まるでその場から逃れるように、母親の方もそそくさと姿を消した。
家族全員が二人の前からいなくなって、これでは何のために古庄がこの家に来たのか分からない。
真琴は古庄に対して、本当に申し訳なくなった。
「ごめんなさい…。古庄先生、せっかく来てくれたのに。私の家族はこんな感じで…」
そんな風に自分を気遣って、やるせない表情を見せてくれる真琴が、古庄はますます愛おしくてたまらなくなる。
「大丈夫。まだ時間はあるし、焦らなくてもいいよ。それに、出会ったばかりの頃の君は、もっと露骨だった」
真琴も自分の過去を思い出して、ほのかに顔を赤くした。
「…それでも、俺は君のことをずっと好きだった。これくらいで、気を悪くしたりしないよ」
古庄のその言葉と微笑みに包み込まれて、真琴の不安は何もなくなる。
心がキュッと甘く痛んで、微かに頷くだけで精いっぱいだった。