恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②



古庄の父親のその声といい、言い回しといい、まるで古庄から言われているように感じて、真琴は思わずドキッっとする。

何と返していいのか分からずに赤くなると、それを見て今度は母親が微笑む。


「あら、赤くなって、照れてるのも可愛いわねぇ♡」


「和彦のやつ、こんな可愛い子を一人で来させるなんて、どういうつもりなんだ?」


「そうね。こんなに可愛いのに、何かあったらどうするのよねぇ?」


こんな風に『可愛い』を連発する夫婦の会話に、真琴は口を挟む暇も見つけられない。出会ったばかりなのに、このフレンドリーな感じにも、真琴は戸惑った。


思えば、これまで古庄以外から『可愛い』と言われたことなんて、ほとんど経験がない。
何かにつけて、自分のことを『可愛い』と言う古庄のことを、「変な人だ」と思っていたのだが…。


古庄家はそろって、普通ではない特殊な感性の一族なのだろうか…?



「…真琴ちゃん?」


面食らって固まっている真琴を、両親共に覗き込んだ。

両親どちらも、古庄や先ほどの晶のような、奮い立つような美形ではなく、真琴の目にはあまり似ていないように思われた。

でも、この覗き込む仕草が、同じことをする古庄を思い出させる。やはりこの二人は古庄の両親なのだと、真琴は思わずにはいられなかった。




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