裏腹な彼との恋愛設計図
隼人さんはスマホを見やるも、何もせずにまたそれを置く。そのうち、バイブは鳴り止んだ。


「出なくていいんですか? 私、邪魔なら外に出てますけど」

「いいんだ、母親だから」

「だったらなおさら……!」

「もう何年も会ってないし、電話も出てない。今さらだろ?」


さっきまでのバニラアイスみたいな甘い空気は、エスプレッソが垂らされたようにほろ苦くなっていく。

私の複雑な感情は、それが混じり合って描くマーブル模様と同じだ。

口をつぐむと、隼人さんは気怠げに足を組み、ぽつりぽつりと語り始めた。


「離婚してから俺は母親についてきたけど、しばらくしてあの人は、俺がいない間に男を家に連れ込んでた」

「え……」

「別にもう離婚してるんだから、男作るのは構わない。でも俺がいたら迷惑だろ。だから俺は家を出たし、連絡も取ってないんだ」


何でもないことのように言う隼人さんだけれど、きっと切ないし、寂しいに違いない。

だって、彼は居場所を無くしてしまったのだから。


柱にメッセージを書きたいという家族に付き添っていたあの時、幸せな家庭を夢見る私に対して、

『俺も作ってみてぇよ、そういう家庭』なんて言葉を寂しげに漏らしたのが、その証拠だと思う。

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