幼馴染みはイジワル課長
のんきにそんな事を考えていた時だった…

後ろから足音が聞こえたような気がして、ふと後ろを振り返ると…

そこには綺麗な女性が立っていた。






「っ…!」


驚いた私と歩未ちゃんは、びっくりし過ぎて声が出ない…

正直最初は幽霊かと思ったけど…薄暗い中でよく目を凝らして見ると………私はその女性の顔に見覚えがあった。



色白の肌に長い綺麗な髪。

育ちの良さそうな凛とした雰囲気と、落ち着いた礼儀正しい感じ…



一度だけ会ったことがある。

…部長の奥さんだ。

確か清香(きよか)さんという名前…




彼女はかなりやせ細っていて、破棄のない顔で歩未ちゃんの事をぼんやりと見ていた。






「だ、誰っ…」


ビクビクしながら私の腕にしがみつく歩未ちゃんに、私は手をしっかりと握った。







「誰でもいいじゃない…」


奥さんは力ない声で言う。




ど、どうしよう…

この状況って…かなりやばいんじゃっ……


普通に考えたら…絶対におかしいシュチュエーションだし…

歩未ちゃんと2人きりになって突然現れたってことは…私達を付けてきて部長や碧が離れたところを見計らって近づいてきたって考えるのが妥当…

どっちにしてもこれは悪い状況だということは明らか…


ちらっと隣の歩未ちゃんを見ると目の前の女性の正体を察したのか、怯えながら女性をじっと見つめていた。






どうする…

どうしたらいいの…



ってゆうか、部長は何やってんの!?



トイレの方に目を向けてみても、部長が出てくる様子はない。







「返してよ…私の幸せ……」

「い、やめっ…」


よろよろと危なっかしい様子でこっちに近づくと、清香さんは歩未ちゃんに詰め寄って腕を力づく握った…

歩未ちゃんは清香さんから腕をすり抜けて、とっさに防波堤のコンクリートの上に逃げる。



やばいよこの人…

目がいっちゃってる…





「人の主人を奪っておいて逃げてんじゃないわよっ!」

「や、やめて下さい!」


清香さんも防波堤によじ登り、歩未ちゃんに抱きつくような体制を取る。私も慌てて防波堤に乗り後ろから清香さんを止めた。







「部外者は引っ込んでて!」

「落ち着いて下さいっっっ」


止めに入る私を肘で遠ざけようとする清香さんに、私は必死になりながら耐えた。






タンっ





歩未ちゃんが隙をついたように清香さんから離れると、防波堤から飛んで下に降りる。






「桜花ちゃんも早く!」

「う、うん!」


とにかく今は逃げるしかない!

ここから部長のところへ早く…!



履いているスカートを持ち上げて、両足に力を入れた時だった…






「ま、待ちなさいっ」








ドンッ







「きゃっ…」
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