幼馴染みはイジワル課長
碧の金城さんの追い詰め方は、まるでドラマの刑事のようだ。低くて落ち着いたトーンで話す碧を横で見ていて、改めてかっこいいと思う。




「だ、だったらなんだって言うの!?私があれをやったとしても、別に何の問題もないじゃない!私のした事をパパに言ったって無駄よ!逆にあんたのとこの会社とはもう取り引きしないかもねっ」


強気の金城さんの言葉に、碧はめんどくさそうにため息をついた。




「こんな子会社の一つや二つと切られたところで、うちの会社は痛くも痒くもない。うちと契約を切られて困るのは、どちらかというとお宅の会社では?」

「なんですって…」

「ここの通販会社の売りはキッチン雑貨だが、今の売り上げはほとんどうちの製品だ。社長の娘なら、それくらいは知っていたはずですよね?」


悔しそうに唇を噛む金城さんに、碧は面白がるように微笑む。





「うるさい!うるさい!!イケメンだからって私の上に立たないで!ムカつく!」

「俺はあんたのこと結構前からムカついてたけどな」


碧のその一言で金城さんの怒りにさらに火をつけ、キーーッとますます怒っている。




「ふん、あんたのお母様は呉服屋やってるんでしょ?」

「それが何か?」

「パパに頼んでその呉服屋を潰してやる!それくらいはうちの会社にだってできるわ!」


ふふんと鼻を鳴らす金城さんに、碧はニコニコして顔をぐっと近づけた。





「そんなことで俺が怯むと本気で思っているのか?」

「な、なんでよっ!あんたお母さんと仲いいって聞いたけど…」

「正直母親の職業など興味ないし、どうなったっていい。俺には一切関係のないことだ。それに…もし万が一呉服屋が潰れたとしても、あの人は怯まない。そういう人だ」


金城さんはさすがに言い返せないのか、顔を真っ赤にして震えている。





「母親よりも、俺は自分の部下の仕事を他社が邪魔した事の方が腹立たしい。なんならこちからこの社と切ってもいいのだが…あんたのお父さんはなんて言いますかね?」

「くっ…」

「わかったならさっさと謝れ。俺は回りくどいのも、お前みたいな女も大嫌いなんだよ。早く謝って俺の前から消えろ」


その言葉が金城さんの胸にグサリと突き刺さったのか、とうとう金城さんは泣き出してしまった。

私はさすがに金城さんがかわいそうになり、碧の袖を引っ張って「もうやめなよ」と止める。




「すいませんでしたっ!これでいいてましょ!?あんたなんかちょっとでもイケメンと思った私がバカだったわ!!」


わーんと泣きながら会議室から出ていく金城さん。会議室は嵐が去ったように静かになる。






「言い過ぎだよ碧…女の子にあんな言い方したらかわいそう」

「…あの女はにはあのくらい言わねえとわかんないよ。お前だってスッキリしたろ」


だけど、金城さん泣いてたし…ちょっと私も心が痛いな。気になってた人にあんなふうに言われたらやっぱり傷つくよね。



「ほら片付けるぞ」

「あ、うん」


私達は残りの片付けを済ませ、オレンジ社を後にした。

そして帰りも碧の運転で会社に戻る。帰り道は行きよりも道が混んでいて、車が停車していることが多い。




「どうした?顔色悪いぞ?」


助手席に座り窓の外を眺めている私の顔を覗き込み、心配そうな顔をする碧。




「あ、ちょっと胃がムカムカするだから大丈夫…」

「…気持ち悪いんじゃないのか?」

「あー…ちょっとだけ…昨日眠れなくて寝不足なだけだから、本当に大丈夫!」

「薬局で胃薬だけでも買って飲めよ。この辺にドラックストアあったっけ…」


車についているナビを操作し始める碧。



「大丈夫だってば!大げさだよ」

「じゃシート倒して横になれ。少しでも寝てろ、会社着いたら起こしてやる」

「で、でも…」


今は移動中だけど勤務中なのに、寝るのはさすがにまずいんじゃ…




「いいから」

「え、ちょっ…」


碧はシートベルトを外すと、私に覆いかぶさるような体制になり私のいる助手席のドア側に手を入れて探ると、レバーを見つけて目前に引いた。




ギ…


「きゃっ」


助手席の私が寄りかかっているシートは突然後ろに倒れると、碧がまるで私を押し倒しているような体制になる。

顔を真っ赤にしていると私の上にいる碧と目が合い、碧はしばらく私を見たあとそっと目をそらした。




「これじゃあ倒し過ぎだな…もう少し起こすか…」

「う、うん…」
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