幼馴染みはイジワル課長
「育ちのような人」

「ふーん…」


タバコの灰を灰皿にトンと落としまた口にくわえる碧。私は大人の香りに包まれながら歩未ちゃんのことを考えていた。

部長は部下である碧に今更奥さんとうまくいっているってことを見せつけたいのかな。歩未ちゃんが知ったら絶対傷つくよ…

奥さんは部長から裏切られていた被害者だけど、どうしても歩未ちゃんの味方になっちゃうな…





「部長と山城か別れた後だしさすがに俺もちょっと構えてるよ」


口から白い煙を出す碧は、半ばため息混じりに言った。




「どうして構えてるの?」

「だって山城と昨日別れたばっかりだろ?その翌日に部長が俺を食事に誘って来てしかも奥さんも一緒なんて…なんか裏がある気がする。確証はないけど」

「こ、怖い…」


裏があるって…そんなのどんな事なのか想像すらつかないけど怖いってことはわかる。





「嫌だな。めんどくさい事には関わりたくないんだ。特に他人の事なら尚更」


面倒くさそうに言う碧に私は「そうだよね…」と返した。




「部長と山城が不倫してた事も別れた事も今は俺達しか知らないだろ?だから部長と会う前にお前と話したかったんだ…俺だけ巻き飲まれたくないからな」

「道連れ!?」


私のその言葉に碧はハハッと笑い、また口から煙を出した。





「そう道連れ。この話を聞いた以上お前は俺の仲間だからな」

「うっ…」


そんな仲間は怖くてお断りだが碧に「仲間」と言われるとちょっと嬉しい自分もいる。





「山城はまだ寝てるのか?」

「うん、多分ね」


さっき一応「コンビニに行ってきます」ってLINEしたけど、返信がないということはまだ寝てる確実大。




「山城がお前んちに泊まってなければお前も一緒に連れていきたかった…」

「えええっ!」


行きたいような行きたくないような…





「俺1人かよ。憂鬱だな」

「…案外何もなかったで終わるかもしれないよ?考え過ぎってことも…」


普通の食事だけで終わるってこともあるかも。まあ、碧の憂鬱だという気持ちはすごくわかるけど…





「まあな。一応言っておくけどこのことは山城には言うなよ」

「うん、わかってる」


そんなこと口が裂けても言いません。

碧はタバコを灰皿に捨てるとふうと息を吐いた。私はコンビニの駐車場に出入りする車を眺めながらハァとため息をつく。






「…どうした?」

「なんでもない。ただ不倫てやっぱりしちゃダメなんだなって思って」

「まあな…」

「歩未ちゃんから部長と不倫してるって聞いた時点で止めるべきだったのかな?私…不倫はいけないことだってわかってたけど歩未ちゃんのこと応援してた。心のどこかで最後には2人は幸せになれるってそんなおとぎ話みたいなことを思ってたのかも…」


だけどそんなことは本当におとぎ話で不倫に幸せな結末なんてないんだ。

歩未ちゃんがこんなに傷付くなら友達なら止めてあげるべきだったのかもしれない。歩未ちゃんの地元の友達はその事で離れていったらしいけど…それはもしかして本人に気づかせてあげる為とかではないのかな?




「俺も少し思ってた。部長は山城に本気でハマってたし…だから別れたって聞いて驚いてる」

「そうなんだ…部長も歩未ちゃんを本気で好きだったんだね」


会社でラブラブなところ見てたけど単なる不倫て感じじゃなかったしね。



「真実は本人にしかわからないしな。部長が山城と別れて奥さんを選んだのは正しい事なんだしお前が言うように不倫はいけないことだって反省して、これからは奥さんを大切にすることだよ」


碧の厳しい意見は冷たくも聞こえたけれど、けれどすごく説得力があった。





「碧だったらどうしてた?」

「…何が?」
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