いつかあなたに還るまで
数ヶ月前、東南アジアを中心に回っていた仕事が国内にシフトされた。
それに伴って上司に顔を広げる目的でと、とあるパーティに駆り出された。
その時にある老紳士と出会う。
最初は本当に単なる偶然だった。やけに顔色が悪い男性がいたのを見かけたのは。周りを見たが付き添いの者がいるようには見えない。
いつもの自分なら見て見ぬ振りをしてそれで終わりのはずだった。
だが何故かその時は手を差し伸べている自分がいた。
理由なんてわからない。
完全な気まぐれだったとしか言えない。
しかしそのきまぐれが自分に思わぬ出会いをもたらした。
後日わかったその相手は西園寺財閥のトップに立つ人間だったのだ。
彼ほどの力があれば自分の居場所なんてすぐに調べがついたのだろう、教えた記憶もないのに後日お礼がしたいとの連絡が来た。
降って湧いたチャンスに断る理由などどこにもなかった。