いつかあなたに還るまで
呼び出されたのはいかにもその立場に見合った豪華な料亭。
ほんの少し人助けをしたお礼がこんな高価なものになるとは。
相変わらず金持ちの感覚は理解できない。
隼人は腹の底で嘲笑うのを堪えるのに必死だった。
千載一遇のこのチャンス。
失敗は許されない。
どうやって取り入ろうかと思案している時だった。
予期せぬ話が舞い込んだのは。
『 君はなかなかにいい青年だとお見受けした。…どうかね? 一度うちの孫と会ってみてはくれんか 』
まだたった2回しか会ってもいないというのに、予想外の突然の申し出に正直驚いた。聞けば来年の春に大学を卒業する孫娘が一人いるのだという。
その孫に見合った相手がいないものかとずっと探していたらしい。
…だったら何故俺なんだ?
省庁の官僚勤めと言えば聞こえはいいかもしれないが、実態は世間で思われているほどいいものじゃない。仕事に追われるだけで大した収入でもない。
明らかに世間のイメージとのギャップがある割に合わない仕事だ。