いつかあなたに還るまで

おいしい思いをしているのはほんの一握りの人間だけ。
収入的にも民間のそれなりの役職の方がよっぽどマシだ。
財閥の孫娘ともなればそれ相応の相手を探しそうなものを…
何故会って間もない俺に声をかけた?

頭の中で様々な疑念が駆け巡る。
じっと相手を見据えてその真意を探るが、さすがは企業のトップ。
その腹の内は全く見えてこない。


…だが舞い込んできたチャンスであることに変わりはない。
これを生かすも殺すも自分次第。


そう結論づけた隼人は、それ以上の詮索を一切やめた。

「…わかりました。お孫さんが嫌でなければ是非一度お会いしたいです」

長年培ってきた笑顔でそう答えると、相手も同じような笑顔で頷いた。

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