音楽が聴こえる
「でも、悟だって家族じゃない」

家族では無い。
血の繋がりも無い。

そんなことは分かっている。

「……それでも悟は…悟は、家族みたいなものだから」

父もあたしも、そして多分悟も『家族みたいな関係』にずっと肩を寄せ合い、依存し合ってた。

「……俺は、そう言うの良く分からなかった。省吾さんに嫌われてたのは知ってたけどね」

「嫌ってたんじゃないよ」

あたしは首を振って、それを否定した。

シュウの才能をいち早く評価したのは、他ならない父だった。楽しみな男だとも言っていた。

ただ、シュウがバンドとして上へ行きたいと願う強い想いが、あたしの気持ちとかけ離れているのを父は早くから、危惧していたんだ。

シュウといつか傷付け合う。

ううん。

あたしがシュウに傷付けられることを、父は極端に恐れていた。

母に寂しい思いを強いても、才能を突き詰めていた自分のエゴを、酷く後悔していたからだ。

母を亡くしてから、ずっと。
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